ひどい頭痛、眼瞼下垂が原因かも。頭痛と眼瞼下垂の関係とは

最近、なんとなくまぶたが重く感じたり、肩こりや頭痛、目の疲れに悩まされていませんか?もしかすると、それは「眼瞼下垂」が原因かもしれません。眼瞼下垂は、まぶたが下がることで視界が狭くなるだけでなく、さまざまな不調を引き起こすことがあります。

眼瞼下垂は、加齢による筋力の低下や、長期間のコンタクトレンズの使用などが原因で上まぶたが下がり、視界が狭くなって見えにくくなる症状があります。眼瞼下垂になると視界が見えにくいだけではなく、無意識におでこや眉の筋肉を使ってまぶたを持ち上げて見やすくしようとするため、頭や首の筋肉が緊張し、肩こりや頭痛が生じることがあります。眼瞼下垂によって生じる症状はそれだけではありません。めまい、吐き気、嘔吐、耳鳴り、目の疲れ、目の周りの筋肉の痙攣、歯ぎしり、歯の食いしばりなどの症状があります。また、夕方になると目を開けているのがつらいため、眠くなくても早く寝たり、テレビは音だけ聞いているという方もいます。

眼瞼下垂になるとは、まぶたを持ち上げるために、おでこ(額)の前頭筋や眉間の筋肉の皺眉筋や鼻根筋が過剰に働くことで、額や首、肩の筋肉が緊張し、肩こりや頭痛につながるためです。また、視界が狭くなることで一生懸命目を見開こうとして無意識に眼に力が入り、眼精疲労から頭痛が悪化する原因にもなります。
また、まぶたが重く感じられるため、目の奥に疲労感を覚えたり、いつも眠気を感じたりすることがあります。

眼瞼下垂による頭痛を予防するには、目や周囲の筋肉の負担を減らすことが重要です。まず、長時間のコンタクトレンズやスマホ、パソコンの使用を控え、定期的に目を休めることが大切です。また、睡眠不足やストレスはまぶたの筋肉の疲労を悪化させるため、十分な休息を取るように心掛けましょう。目の周りの筋肉をリラックスさせるために、温かいタオルで目を温めることも効果的です。さらに、額や首の筋肉をほぐすストレッチを行うことで、頭痛の軽減が期待できます。

眼瞼下垂を自力で治す方法には、まぶたの上をマッサージしたり、まぶたを持ち上げる筋肉(眼瞼挙筋)を鍛えるトレーニングが紹介されることがあります。まぶたをマッサージしたり、無理に筋肉を鍛えようとしたりしても、瞼板から離れた腱膜が元に戻ることはありません。逆に、過度にマッサージを行うことでまぶたの皮膚が余計にたるんだり、挙筋腱膜がさらにダメージを受けたりする可能性があり、症状を悪化させるリスクがあるため、いずれの方法も医学的な根拠は乏しいと言えます。
一方で、目の疲れ軽減する目的で、目の周りの血流を良くする軽いツボ押しや温めるケアを行うことは、疲労による一時的なまぶたの重さの解消には有効な方法です。
眼瞼下垂の主な原因は、挙筋腱膜と呼ばれる「まぶたを持ち上げるための筋肉」が瞼板から離れることで発症します。マッサージやトレーニングは眼瞼下垂そのものを根本的に改善するものではありません。腱膜が一度瞼板から離れると、自然に治ることはありません。根本的な改善には手術が必要です。症状が進行している場合は専門の医師による診察を受けるようにしましょう。

眼瞼下垂は瞼と筋肉との結合部分が徐々に緩んでくる為にまぶたを開ける力が弱くなる症状です。眼瞼下垂の手術は、徐々に緩んできた上眼瞼挙筋(まぶたを挙げる筋肉)と瞼板(まぶたの裏側にある硬い板状の組織)との結合部分を縫いつけることで、挙筋の機能を回復させて目を開きやすくし、おでこの負担が減り、頭痛や肩こり、目の疲れなどの症状が改善する可能性があります。

眼瞼下垂が原因の頭痛は、手術で改善するという論文が報告されています。

Bahceci Simsek Iが2017年に報告した「上眼瞼の眼瞼下垂修正術および眼瞼形成術が頭痛関連の生活の質に与える影響」の論文

引用:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28253391/
著者:Bahceci Simsek I
所属:Oculoplastic Division, Department of Ophthalmology, Yeditepe University Medical School, Istanbul, Turkey.
.JAMA Facial Plast Surg.19(4):2017.293-297.

研究の方法

2014年9月から2015年9月の1年間、眼科クリニックで手術を受けた患者を対象に調査を行いました。対象となったのは、眼瞼形成術(まぶたのたるみを取る手術)108名 と 眼瞼下垂修復術(まぶたの筋肉を調整する手術)44名の2つの手術を受けた患者です。
緊張型頭痛(ストレスや筋肉の緊張が原因の頭痛)がある患者に対し、手術前後で「頭痛の影響度」を評価するHIT-6(頭痛影響テスト)を頭痛の程度を評価し、術後の変化を観察しました。経過観察期間は平均13.5週間(約3か月)でした。

研究の結果

手術前に緊張型頭痛があった患者数は、 眼瞼形成術を受けた患者38人(35.2%)、眼瞼下垂修復術を受けた患者 28人(63.6%)です。
HIT-6スコア(数値が高いほど頭痛の影響が大きい)を比較して、眼瞼形成術を受けた患者のスコアは55.9から46.4に低下し、眼瞼下垂修復術を受けた患者では60.0から42.3(より大きく改善) に低下しました。
手術を受けた患者の多くが頭痛の改善を実感しており、特に眼瞼下垂修復術を受けた患者でより顕著な改善が見られました。
HIT-6スコアの改善幅(どれだけスコアが下がったか)を比較すると、眼瞼形成術を受けた患者のスコア低下が平均9.5ポイントだったのに対し、眼瞼下垂修復術を受けた患者では17.8ポイントの低下が見られました。特に、眼瞼下垂修復術の中でも挙筋切除術を受けた患者は、ミュラー筋切除術や前頭筋懸垂術を受けた患者よりも頭痛の改善度が高いことが示されました。

結論

眼瞼形成術および眼瞼下垂修復術は、単なる美容的な処置にとどまらず、緊張型頭痛を持つ患者の頭痛を軽減し、生活の質を向上させる可能性があることが明らかになりました。特に眼瞼下垂修復術(挙筋切除術)は、頭痛の影響が大きい患者にとって有効な治療法となり得ることが示唆されています。そのため、緊張型頭痛がある患者に対して、これらの手術を機能的な適応として考慮することが重要であると考えられます。

頭痛の原因が必ずしも眼瞼下垂とは限りません。姿勢の悪さやストレス、睡眠不足、歯の噛み合わせ、その他の病気など、さまざまな要因が関係していることもあります。
もし眼瞼下垂の症状が疑われる場合は、専門の医師に診てもらうことが大切です。適切な診断と治療を受けることで、症状の改善が期待できます。日々の不調を放置せず、ご自分の体のサインを見逃さないで、適切なケアを心掛けましょう。

眼瞼下垂は軽度の場合、見た目の変化が少なく診断が難しいことがあります。特に「まぶたが重い」「頭痛がする」といった症状だけでは、他の原因と区別しづらいため、一般的な診察では見逃される可能性もあります。診断を受ける際は、眼瞼の開き具合を測定する専門的な検査を行うクリニックを選ぶようにしましょう。また、まぶたの開閉テストや、眉を動かしたときの補助的な動きをチェックすることで眼瞼下垂と診断がつく場合もあります。

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立花院長

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